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歴史の浅い当工房の屋号のことなど話題にするのもおこがましいのでありますが、ときどき
「なかなかいい名前だね」とほめられて、つい命名の由縁をおはなししたくなります。
惜しげもなく表具技術と商売のコツを伝授してくれた一関の師匠の店での見習いを終えて、自宅で仕事を始めた当初は細々とした注文があるだけでしたから、屋号だなんて思い至りませんでした。
ある日、お客さまが「そろそろ表具屋らしい名前を付けたら」と勧めてくださいました。
う~ん、中身はまだ半人前なのにいっぱしの職人みたいで照れくさい・・・
けれど、かっこいい看板に見合う表具屋になりたい、と思う気持ちもあってあれこれ考えるようになりました。
師匠の仲間に「伊藤天游堂」いう表具屋さんがいて、つねづねステキな屋号だなと思っていたので真似ることにしました。 基本の型は「こがさか○○堂」と決定!
ここまでは順調でしたが、肝心の○○が埋まりません。じっとり汗ばむ季節で、裏打ちをしたり切り継ぎをしながら頭の中はさまざまな漢字二文字が浮かんでは消えていきます。
そんな時、軒先に吊るしていた風鈴が 「チリ~ン」
その涼やかな音が、まさに天からのお告げのように耳元に届いたのです (笑)
”こがさか風鈴堂”
でもこの清々しさは季節感がありすぎて、冬は耐えられるだろうか?
と、目の前には出来上がったばかりの掛け軸が・・・ 本紙は杜牧の漢詩「山行」です。
「・・・そぞろに愛す楓林のくれ・・・」とあります。
高校時代、漢文がきらいだった私ですがあらためて味わうと、なかなかに奥深い意味がありました。 決めた!
こんな成り行きで「こがさか楓林堂」となったのでありました。
山行 遠上寒山石径斜 白雲生処有人家
停車坐愛楓林晩 霜葉紅於二月花
わが家のモミジも今を盛りと、色づいております。